善い心を育てる 平成30年10月

 この時期は「食欲の秋」「味覚の秋」という言葉があるように、食べ物がいつもよりおいしく感じられ食欲が増す季節です。
おいしい食事をいただく時間は楽しいものです。
しかし、楽しむだけではなく、食事をいただくときには、感謝の心を忘れてはいけません。

 日本では、食事の前には「いただきます」。食事の後には「ごちそうさま」と言います。
「いただきます」は、私が生きるために「食材の命を私の命にさせていただきます」という意味です。
当たり前のことですが、肉や魚はもちろんのこと、野菜や果物にも命があります。その命を「私が生きるためにいただきます。」という命への感謝が「いただきます」という言葉には込められています。

 「食材にも命がある」誰でも知っていることです。しかし、そんな大切なことも、ついつい忘れて、好き嫌い・味の好みについて文句を言ってしまうのが私たちです。
だからこそ、大切なことを思い出すために食事のたびに声に出して言うのです。「いただきます」としっかり声に出して言うなかに、素直に感謝できる心を育てているのです。

 毎朝、ご本尊様に手を合わせ、南無阿弥陀仏とお念仏をお称えすることも同じです。
「私たちの命には限りがあります。その瞬間はいつ訪れるかわかりません」こう言うと「そんなことは言われなくても分かっている」と多くの方が思われるかもしれません。
では、今日、私の人生が突然終わりを迎えるかもしれないと心から思って、生活されている方はどのくらい、いるでしょうか?おそらく多くはないと思います。
しかし、実際に不幸にも事故や災害に巻き込まれ、突然命を落とされる方が毎日いらっしゃいます。

 阿弥陀仏様は、「南無阿弥陀仏」と声に出して、救いを求めお念仏をお称えする人が、この世から旅立つときに必ず、心身に一切の苦しみがない極楽浄土へその人を導こうと誓いを立ててくださっている仏様です。
毎朝、お念仏をお称えするときに、命の儚さ・そして自分がこの世から旅立つ先の事を思うことで、「今日をしっかり善い姿で生きよう」と思う心が生まれてくるのです。
「いただきます」と同じで知ってはいても、行動にしなければ、ついつい忘れてしまうのが私たちです。
毎日しっかりとお念仏をお称えし、一日一日を大切に過ごしていきましょう。