お念仏の温もり 平成31年2月

 暦の上では立春を迎える二月ですが、まだまだ寒い日が続きますね。
 この時期お檀家さんのお宅へ伺うと、座った座布団がじんわりと温かいことがあります。
「寒い中お寺さんがお参りに来てくれると思って」と、お家の方が事前にストーブの前で温めて下さっていたのですね。
こうした心づかいは本当にありがたいものです。
温かい座布団に座らせていただくと
冷えた体はもちろん、心まで温かくなりました。

 温かいといえば、仏様の教えもとても温かいものです。
例えば私たちが普段からお称えしているお念仏の中にも、阿弥陀様の温かい御心が込められています。

 これは阿弥陀様がまだ法蔵菩薩というお名前で修行されていた時のお話です。
法蔵菩薩には大きな願いがありました。
それは「この世で悩みや苦しみを抱えるすべての人を救い摂りたい」という願いです。
法蔵菩薩はそのための方法をとてつもなく長い時間をかけて、思い巡らされました。
その結論として
「もし私が仏になったならば、南無阿弥陀仏と称えるすべてのものを我が国である西方極楽浄土に救い摂ろう」と誓われたのです。
 そして法蔵菩薩は私たちには想像も出来ないくらい長い時間の修行の末に、ついに阿弥陀仏という仏と成られました。
お念仏のお誓いを成し遂げられたのです。

 仏教では私たちの生きている世界を娑婆と言います。
娑婆は様々な悩みや苦しみに満ちた世界であり、
決して自分の力では悩みや苦しみを断ち切ることの出来ない私たちです。
そんな私たちを阿弥陀様はお浄土から胸を痛めてご覧になり、
「どうかお念仏を称えておくれ」と
私たちがお念仏をお称えするのを今この時も待っておられます。
普段からお念仏をお称えしていれば、この世で命が尽きる時には阿弥陀様がお迎え下さり、心と身体の苦痛を取り除いて、極楽浄土まで導いて下さいます。
お念仏の中には、称えるすべて人に向けられた阿弥陀様の温かい御心が込められているのです。

 普段は亡き方のご供養のためにと、お念仏をお称えする機会が多い私たちです。
しかしそのお念仏の中に込められた阿弥陀様の御心に思いを馳せますと、お念仏がさらに有り難く感じられるのではないでしょうか。
まだまだ寒い日が続きます。
阿弥陀様の温かい御心の込もったお念仏、ご一緒にお称えしましょう。