心のすがすがしさ 令和元年7月

 北の大地も盛夏を迎えました。シーンと静まり返った冬から比べると、今の季節は太陽や花々は煌びやかに、虫たちは賑やかな音を奏でて、夏を一層盛り上げているかのようです。
 
 賑やかな音を奏でる虫たちの中でも、蝉の声は一番大きく、その代表格ではないでしょうか。この北海道にも10種類(札幌市)の蝉が生息すると確認されています。

 ご存知の通り、蝉は幼虫の間、数年(種類によって様々)に亘り、地中で生き、ようやく地上に出たかと思うと、わずかな期間だけ(1週間~1カ月等、種類によって様々で諸説あり)成虫として夏を賑やかに演出して、一生を終えてゆくのです。
   
「阿弥陀仏と心は西に空蝉(うつせみ)のもぬけはてたる声ぞ涼しき」
 
 このお歌は、宗祖法然上人が大阪の四天王寺に詣でられて、沈みゆく夕日を拝まれて、お念仏をお称えされた時に詠まれたお歌です。
「蝉が殻からぬけ出るように、わが身も、妄念も余念も忘れ果てて、願生の思いを西方に馳せ、ひたすらにお念仏する心のさわやかさ、声のすがすがしさは、何とも言えないうれしさである事よ。」(早田哲雄著『 昭和更編校注勅修法然上人御伝全講 七冊』より)

 夕日を拝みながら、その先に必ずいらっしゃる阿弥陀様を慕い、お念仏することによって、まさに阿弥陀様のお浄土にすでに居るかのような境地になる心を蝉の抜け殻に譬えて詠んだものでありますが私たちにとって、妄念や余念という心は、なかなか切り離すことが出来ないものです。
 
 しかし、そんな妄念や余念ばかり私たちをも「称えたものを必ず救う」と誓われた阿弥陀様の本願のお力をただ信じて、お念仏をお称えし続けることで、私たちも「声ぞ涼しき」という境地の一端を感じさせていただくことが出来るのではないでしょうか。一声一声、一歩一歩…。

合 掌