香を焚く 令和8年3月

 三月はなにかとイベントが多い時期です。学生にとっては卒業式等の別れの時期。仏教的に申しますとお彼岸の時期ですね。
 私の通っていた大学では卒業式になると『いまささぐ』(藤堂恭俊氏 作詞)という歌を大学の混声合唱団の方が歌われていたのを覚えています。

いまささぐ このみあかし まことの道を あかしたまえ
このあかり とわにたえず つたなき歩み てらしたまえ
いまささぐ このきよか まことのかおり うつしたまえ 
このかおり とわにたえず わがゆくさきに かおりたまえ
いまささぐ このはなたば まことのこころ さかしたまえ
このはなぞ とわにたえず われにほほえみ においたまえ

この歌を聞きながら歌にあわせて、蝋燭の灯火、清いお香の香り、美しい花が舞台に用意され、会場の厳かな雰囲気がより引き立ったのを今でも鮮明に覚えています。
ですが最近お彼岸の時期にお墓や檀家様のお参りをさせていただいてふと思うことがあるのです。
それは煙の少ない、もしくは無煙のお線香、また仏花も生花でなく造花を使われる方が増えてきているなぁと言うことです。
特にお線香に関して申し上げると、浄土宗のお勤めではまず必ず最初に『香偈』からはじまるのです。

願我身浄如香炉(がんがしんじょうにょこうろ) 
願我身如智慧火(がんがしんにょちえか)
念念焚焼戒定香(ねんねんぼんじょうかいじょうこう)
供養十方三世仏(くようじっぽうさんぜぶ)

 この香偈には願わくはこの私の身がお香の煙によって清らかになり、正しく世の中の物事を判断できますように。
 また社会の決まりを守り正しく生きられるように、さらには心を平静に保つための香を焚き、またそのお香の香りをもってあらゆる仏さまを供養いたしますという意味があります。
 つまりは自分の身と心を香から出る煙によって清めそれを糧に生き、またその香り高い煙を仏様の為にも焚くというのが重要です。
 他宗を見ても浅草の浅草寺でも香を浴びて身を清める、または体の悪い所に香の煙を当てることで病が治るともされています。
 またお香には『香の十徳』があるとされています。これは中国の唐時代に書かれ、日本ではトンチで有名な一休さんが広めたと言われております。

1 感格鬼人(かんかくきじん)
感覚が鬼人のように研ぎ澄まされ集中できます。
2 清浄心身(しょうじょうしんじん)
心身を清浄にします。
3 能除汚穢(のうじょおえ)
けがれやよごれを除きます。
4 能覚睡眠(のうかくすいみん)
眠気を覚ましてくれます。
5 静中成友(せいちゅうじょうゆう)
孤独な時に心を癒してくれます。
6 塵裡偸閑(じんりゆかん)
忙しい時にくつろぎを与えてくれます。
7 多而不厭(たじふえん)
多くあっても邪魔になりません。
8 寡而為足(かにいそく)
すくなくても芳香を放ちます。
9 久蔵不朽(きゅうぞうふきゅう)
長期保存しても傷みません
10 常用無障(じょうようむしょう)
常用しても害がありません。

 このようにお香には様々な徳があるのです。ですから皆さま是非お彼岸の時期には我が身の為、仏様の為、そしてご先祖様の為にも上等なお香を焚いて、お参り頂ければと思います。きっと心晴れやかになり、良いお参りが出来て、日々の生活がより良いものになるのではないかと思います。

( 2026年2月28日 )

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