先月、お亡くなりになられたお檀家さんのお宅に枕勤めの為に向かった。
お勤めが終わり、喪主の方とお話をしていると、まだ歩き始めたばかりとおぼしき男の子が集まった親戚たちの間をすり抜けて祭壇の前にやってきた。
するとその子はおもむろに祭壇の前に正座をして、小さな小さな手を合わせて
「ナン、、、ナン、、、ナン、、、」と声を出し始めた。
急な出来事で呆気にとられていたが、「すごいね!えらいね!」という言葉がすぐに出てきた。
無垢な心で素直に受け取り手を合わせるシンプルな信仰の姿がここにあると心が震えた。
翌朝、再びお勤めに訪れると祭壇にムスカリとタンポポが小さな瓶に入れられ飾られていた。
喪主に伺うと、今朝方昨日手を合わせていた子が散歩をしている時に摘んできたものという。
お勤めが終わると、今度は3歳くらいのお姉ちゃんと一緒にヨチヨチ歩きの男の子が、再び親戚たちの間をすり抜けて祭壇の前にやってきた。
そうすると、お姉ちゃんも一緒に小さな手を合わせ「ナン、、、ナン、、、ナン、、、」と声を出す。
再び私は「すごいね!上手だね~!」と話すと、「じいじが毎日やってるの。」とお姉ちゃんが答えてくれた。
法然上人の御法語に、『わが身の人となりて 往生を願い念仏することは ひとえに わが父母の養いたてたればこそあれ』とあります。
例えば、親が明るく挨拶し、周りの人と仲良く笑顔でいれば、子供も挨拶をするようになりますし、積極的にお友達を作るようになっていきます。
じいじが手を合わせる尊いお姿を、子、孫、ひ孫がしっかりと受け取り、紡いで紡いで、
そしてお花を供えるという優しい心を育み、素晴らしい子となっている。
夕方、お勤めが終わると、朝の女の子と男の子の他に小学校低学年と中学年の二人も加わり祭壇の前に正座する。小学生はちゃんと声に「なむあみだぶつ」とお称えし、それに倣い幼い子たちも「ナン、、、ナン、、、ナン、、、」と声にする。
それが済むと小学生がちょっとした悪ふざけを始めた。
ポクポクポク キンキンキン ゴーンゴンゴンゴーン
周りの大人が必死に止めに入るが、
私は、「乱暴に扱わないと約束してくれたら、遊んでいいよ。」と子供たちに伝えた。
ポクポクポク キンキンキンキン ゴーンゴーンゴーン
それを見ながら、親戚たちは談笑を始める。
じいじも極楽浄土からこの様子を見て喜んでくださっているに違いない。
『光明遍照 十法世界 念仏衆生 摂取不捨』観無量寿経というお経の内にある言葉です。
阿弥陀さまは「なむあみだぶつ」と称えた者を一人残らず救いとり、極楽浄土にお導き下さることを我々に約束してくださっています。
なむあみだぶつ ともに励み ともに歩んでまいりましょう。